トランプの定番がバイシクルである理由【トランプの選び方】
「マジシャンって、どんなトランプを使ってるんですか?」——マジックに興味を持った人が、まず気になるところではないでしょうか。答えはあっけないほどシンプルで、世界中のマジシャンに使われてきた定番が BICYCLE(バイシクル)です。この記事では、六本木のマジックバー BAR21 がお届けする、バイシクルが定番であり続ける理由と「最初の1つ」の選び方、そしてマニアの間でも意見が分かれるポイントまでを紹介します。
バイシクルとは何か
バイシクルは、アメリカの USプレイングカード社が19世紀末から作り続けているトランプのブランドです。中でも自転車の天使が描かれた「ライダーバック」と呼ばれる裏模様は、100年以上ほぼ変わらない不動の定番。映画やドラマでマジシャンが持っているトランプも、よく見るとたいていこれです。世界中のマジック解説書や動画教材の多くが、このデックを手にした前提で書かれているため、「マジックを学ぶ共通言語」のような存在になっています。
理由1: 紙質とフィニッシュ
バイシクルが選ばれ続ける最大の理由は、紙の質です。2枚の紙を貼り合わせた適度なコシがあり、カードの表面には「エアクッションフィニッシュ」という細かなエンボス加工が施されています。これによりカード同士の滑りが均一になり、シャッフルやファン(扇状に広げる技法)が安定するのです。安価なプラスチック製トランプでは、この「手に吸い付くのに滑る」感覚は再現しにくいと言われます。
理由2: 消耗品として買い続けられる
意外に思われるかもしれませんが、トランプは消耗品です。手の脂と湿気で数週間〜数か月でヘタるため、練習用には新しいデックを複数ストックしておくのが定番の買い方です。バイシクルは世界中どこでも、いつでもほぼ同じ品質のものが手に入り、価格も手頃。この入手性と品質の安定こそ、長年定番であり続ける理由です。デザイン性の高い高級デックは確かに美しいのですが、廃番になったら同じものが手に入らないという弱点があります。
理由3: 「普通のトランプ」に見えること
クロースアップマジックでは、道具が特別に見えた瞬間に不思議さが半減します。バイシクルは世界で一番流通しているトランプなので、お客様にとって「どこにでもある普通のトランプ」に見える。派手な限定デザインのカードは目を引きますが、「そのカードに仕掛けがあるのでは?」と思われては本末転倒。「普通に見えること」は演技上、何より大切な性質です。
賛否・好みが分かれるポイント
ここまで定番として紹介してきましたが、正直に言うと、トランプ選びはマジック愛好家の間でも好みが分かれるテーマです。一般によく語られる論点を挙げておきます。
紙質の好み: バイシクルは比較的柔らかめの腰と言われます。もう少し硬くパリッとした感触を好む人も多く、同じUSプレイングカード社の「Tally-Ho(タリホー)」や「Bee(ビー)」を愛用する声も根強くあります。どれが上という話ではなく、手の大きさや扱う技法によって感じ方が変わる部分です。
高級デック派: 近年は海外ブランドを中心に、デザイン性の高いプレミアムデックも人気です。美しさや所有する楽しみは大きな魅力ですが、1つあたりの価格が高く消耗品としてはコストがかさむこと、限定生産で買い足せないことが弱点として挙げられます。
プラスチック製派: 耐久性を重視して、水濡れに強く長持ちするプラスチック製カードを選ぶ人もいます。ゲーム用途では合理的な選択ですが、マジックの技法との相性は紙製に分があるとされることが多いようです。
つまり「バイシクルが唯一の正解」ではありません。ただ、教材との相性・入手性・価格のバランスで、最初の1つとしてはライダーバックがもっとも無難——これが広く共有されている見方です。慣れてきたら好みでいろいろ試すのも、この趣味の楽しみのひとつです。
初心者がつまずきやすいポイント
サイズの違いに注意してください。日本の量販店で売られているトランプはひと回り小さい「ブリッジサイズ」が中心ですが、バイシクルの標準は「ポーカーサイズ」。マジック教材はポーカーサイズを前提にしているものがほとんどなので、最初は大きく感じても標準サイズに慣れておくのが得策です。
もうひとつは湿気。日本の夏は湿度が高く、カードがヘタりやすい環境です。開封するのは使う分だけにして、残りは未開封のまま保管を。開封済みのデックもチャック付き袋などで湿気から守ると長持ちします。買ったデックを一度に全部開けてしまうのは、初心者にありがちなもったいない失敗です。
手入れと買い替えの目安
紙製トランプは消耗品なので、「いつ替えるか」の目安を持っておくと練習の質を保てます。よく言われるサインは、ファンにしたときの広がりが不均一になる、カード同士が貼り付いてスムーズに滑らなくなる、端がめくれたり毛羽立ったりしている——このあたりが替えどきです。ヘタったデックで練習を続けると、技法の感覚そのものが狂ってくるので、もったいながらずに交換するのが結果的な近道です。
長持ちさせるコツはシンプルで、手を洗ってから触ること、使い終わったら箱に戻して平らな場所に保管すること。日々の保管を丁寧にするだけで、ヘタりはかなり遅らせられます。また、練習用と人前で見せる用でデックを分けておく使い分けも、愛好家の間では定番のやり方です。人前に出すデックは常に状態のよいものにしておくと、扱いやすさも見た目の印象も安定します。
初心者が最初に買うべき1つ
結論はシンプルです。バイシクルの「ライダーバック」、色は赤か青。これから練習を始める方も、まずはこれを1つ(できれば消耗を見越して2〜3個)買えば間違いありません。世界中のマジック教材のほとんどが、このデックを前提に書かれています。
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プロの実演を観てから始めたい方へ
同じトランプでも、プロの手の中では別の生き物のように動きます。東京・六本木の BAR21 では、毎晩現役マジシャンがカードマジックを実演しています。道具を買う前に「本物」を一度観ておくと、練習のゴールがはっきりしますよ。